人は人を救えないが、「癒す」ことはできる〖読書感想/書評〗
ただ寄り添うこと。
それだけでも「癒し」になる。
死は怖いもの。
これは誰しもが思うことでしょう。身近な人の死、余命宣告、病気、不運な自己など、生と死は隣りあわせです。
死を受け入れろと言われても、それはとても難しいことです。
本書は臨床宗教師として死と向き合ってきた著者が死について考え、人生を前向きに考えるきっかけとして執筆されました。
1.著者紹介
著者:谷山洋三
東北大学大学院文学研究科准教授。日本臨床宗教師認定臨床宗教師。日本スピリチュアルケア学会認定スピリチュアルケア師。
東北大学文学部卒業後、同大学大学院文学研究科博士後期課程を修了。
長岡西病院(新潟)の仏教系緩和ケア病棟でビハーラ僧として勤務したのち、四天王寺大学准教授、上智大学グリーフケア研究所主任研究員を経て、2012年に現職。
専門は臨床死生学。
2.人は人を救えないが、「癒す」ことはできるはどんな本?
あなたは死と向き合ったことはあるでしょうか。身近な人の死をはじめに、生があるところには死が存在します。
ただ死の場面と直面したとき、それを受け入れることは大変なことです。なぜ、死を受け入れることができないのか。
著者は感情があるからと述べています。
著者曰く、悲しいだけでなく、怒り、不安、恐れ、後悔などさまざまな感情が入り交じり、死を受け入れがたくしているといいます。
死と向き合い、考えることで私たちの人生を考えるきっかけを与えてくれる本です。
3.メモ
「死ぬのが怖い」のは、死んだらどうなるかわからないから
死が怖いのは、「わからない」から。未知のことに対して恐怖心を抱くのは、ある意味当たり前のことだと言えます
p.33
私たちは臨死体験をしたなどのことがない限り、死を経験したことがありません。死ぬことは未知のことです。
だからこそ怖いと感じるのは当たり前のことだと著者は述べています。
死後の世界ってどうなっているんだろうと考えたことはありますか?
死後の世界はどうなっているか分からないです。だからこそ想像してみることで、その恐怖を和らげることができます。
話せるうちに、「ありがとう」を伝える
感謝の気持ちがあるのとないのとでは、実はすごく大きな違いがあります
p.81
みなさんは感謝の言葉を伝えているでしょうか。いざ、面と向かって「ありがとう」と伝えるのは恥ずかしいですよね。
ですが、話せるうちに感謝の気持ちも謝罪も伝える方が、お互いのためになります。
死が近くなると、思うように身体も動かせなくなります。意識がなくなってしまったらそれこそ何もできなくなってしまいます。
だからこそ、できるときに伝えておいた方がいいのでしょう。
ただ寄り添うこと。それだけでも「癒し」になる
ただそこにいてくれる、それだけでも相手には「癒し」になります。死を前にして、孤独ではないということが、本人にとって支えになるのです。
p.120
著者曰く、患者本人と残される家族との間には、死を受け入れる過程の中で気持ちのズレが生じることが多いと述べています。
死を目の前にして、どのように接すればいいのか困惑してしまう場合が多いといいます。
大切な人のために何かをしてあげたいと思うのは自然なことではあります。しかし、残される家族ができるのは、ただ寄り添うことなのだそうです。
それだけでも癒しになり、支えになるのです。
4.感想・まとめ
死に直面したとき僕らには一体どんなことができるのでしょうか。また、一生懸命生きるのか、それとも死を選ぶのか。
本書は死を通して自分の人生について考えるきっかけとして、今を生きるための考えを整理するための一冊になると思います。
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